貿易金融をテーマにした国内初の実証実験
世界中に点在するサーバにデータを置き、データの改ざんや消失リスクが低いネットワークを作ることができる「ブロックチェーン」。特定の認証サーバーがなくても関係者間で取引データの正当性を一意に確定させることができるのが特徴で、金融、決済、IoTなどさまざまな分野への応用が期待されています。この今最も注目されている技術を活用したビジネス創発に挑もうと、あるプロジェクトが動き出しています。
NTTデータは、2016年2月から、オリックス、オリックス銀行、静岡銀行、NTTドコモ・ベンチャーズと共に共同研究を開始。世界的にブロックチェーン技術の活用が期待される貿易金融の領域について、国内で初めて実証実験を行い、貿易金融分野におけるブロックチェーン技術の適用可能性を確認しました。
取引が複雑、手続きの煩雑化が課題
貿易取引は、取引上の関係者が多く、輸送に時間がかかるため商品の引き渡しと代金決済のタイムラグが発生し、取引が複雑化するという特徴があります。現状では、貿易取引には、輸出者・輸入者それぞれのリスク回避のため、銀行の発行する信用状が用いられています。ただ、既存の貿易金融における信用状の取引では、輸出者、輸入者、銀行等と取引関係者も多いうえ、郵送やEメール等の手段で事務手続きを行っており、取引に時間がかかるのが課題でした。
事務手続きが大幅短縮、
スピーディーな取引が可能に
実証実験では、ブロックチェーン技術の特長である「共通台帳を分散管理する」機能を応用し、取引関係者が情報を同時に共有できることを確認。これによって、信用状取引の事務手続きが大幅に簡略化でき、これまで信用状を発行してから輸出者へ情報が届くまで数日程度かかったところ、ブロックチェーン技術の応用により最短で数分で情報を閲覧することが可能となることが分かりました。この技術は、信用状だけでなくインボイスや船荷証券などの船積書類の手続きでも応用できる可能性があり、実用化すれば貿易に関する手続きが、今よりぐっとスムーズになります。
海外との貿易をもっとスピーディーに――。ブロックチェーンの応用により、世界中の様々な商品がさらに身近になる日もそう遠くないかもしれません。