Open innovation forum|オープンイノベーションフォーラム

テーマ
5G
開催日
2018年7月26日(木)
レポート

2020年の商用サービス開始が近づく、第5世代移動通信システム「5G」。その実現は従来のようなモバイル通信の進化にとどまりません。社会を支えるあらゆる技術と結び付き、さまざまな分野でこれまでの「当たり前」を変えていくと予想されています。

開会に先立つあいさつでは、「豊洲の港から」のフォーラムリーダーで、名古屋大学情報連携統括本部情報戦略室教授の山本修一郎氏が「現実の技術が思考をはるかに追い越し進化している現代において、個別の組織だけでアイデアを実現するのは既に不可能。5Gもオープンイノベーションにより多様な分野の技術と組み合わせ、新しい価値を生み出すことが求められている」と述べました。

基調講演には、5Gの商用化に向けて今まさに準備を進めているNTTドコモの三ケ尻哲也氏を迎え、そもそも5Gとはどんなもので、5Gで何が変わるのかを解説してもらうとともに、新たなソリューション創出に向けたドコモの取り組みについての紹介がありました。また、ディスカッション登壇者には、画像処理技術「CVテクノロジー」によりGPS情報をそのまま3D地図に変換し仮想空間(パラレルワールド)を出現させるサービスを提供するアクアコスモスの秋山正樹氏、5Gが実現してもIoTミドルウエアが進化しないと速度が出ないとの信念のもと、自動車業界をはじめさまざまな産業シーンにIoTミドルウエアを提案するアプトポッドの坂元淳一氏、世界で唯一Wi-Fi電波反射を解析し、人が呼吸しているかどうかまで察知できるレベルのセンサー機器ディスラプター・Origin Wireless Japanの藤井聡氏、クリエイター向けのペンタブレット関連技術で8割のシェアを持ち、VRを活用してその場でリアルな立体設計を実現させるソリューションを展開するワコムの玉野浩氏を迎え、各社の事業内容と5Gの活用についての展望を語りあいました。 

■基調講演「5G」

「株式会社NTTドコモ」法人ビジネス本部 ソリューションサービス部長 三ケ尻哲也氏
モバイル通信は1980年代に第1世代が登場して以降、およそ10年毎に世代交代が重ねられてきたのこと。当初2.4kbpsだった通信速度は現在の第4世代(4G)では988Mbpsに進化しておよそ40万倍に。国際標準化で議論される要求条件ではここからさらに20倍の通信速度20Gbpsが目標となっている5Gの開発をドコモでは進めている最中。しかし、5Gが目指すのは通信速度のアップだけではありません。「高速・大容量」「多数の端末との接続」「低遅延」を3本柱とし、活用次第で社会の大きな変革を担う可能性を秘めています。ドコモではこれら5Gの特徴を社会に生かすため、幅広いパートナーと共に新たな利用シーン創出に向けた取り組みの拡大を目指し、2018年2月より「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」を提供。現在1,500を超える企業・団体が参加しています。2018年4月には四ッ谷に「ドコモ5Gオープンラボ™ Yotsuya」を開設し、常設の5G技術検証環境を整えました。同年9月には大阪、12月には沖縄にも開設予定。5G+クラウド、5G+AI技術の検証も可能な環境で、パートナー企業や団体と共に新たなビジネスを“協創”していく考えを語っていただきました。

■ディスカッション登壇者の自社サービス紹介

「アクアコスモス株式会社」取締役副社長 秋山正樹氏
映像がそのまま3D地図になる画像処理技術〈CVテクノロジー〉で、クラウド上に“もう一つの地球”を創ることを目指す企業。5Gによりリアルとヴァーチャルの垣根がなくなり、ヴァーチャル内で新しい経済、文化、仲間、国を創り出す「3Dパラレルワールド構想」を提唱。独自の3Dプラットフォームで、撮影した映像をそのまま座標軸を持った三次元地図に変換しヴァーチャル世界を構築。5Gと組み合わせることでリアルタイムに現実と連動する3D世界の創造を目指しています。

「株式会社アプトポッド」代表取締役 坂元淳一氏
膨大な時系列データをリアルタイムで高速・正確に収集・伝送するデータインフラやそれを可視化・解析するダッシュボード、さらに遠隔操作技術をワンストップで提供する企業。独自のプロトコル技術(intdash Stream Control Protocol)により、モバイル回線でもデータの欠損やオーバーヘッドを最小化し完全性とリアルタイム性を実現。5Gによる回線の高速化に比例し、欠損やオーバーヘッドリスクが高まることが予想されるため、リスク回避できる同社の技術がより注目を集めることが期待されます。

「Origin Wireless Japan株式会社」執行役員 経営企画 藤井聡氏
電波や反射を解析する独自のアルゴリズムにより、屋内の人や物の動きを物理センサーなしで検知できる技術を持つ企業。Wi-Fiを利用することで、カメラやセンサーが不要となり、安価で高精度、そしてプライバシーへ配慮したセンシングを実現。侵入検知や呼吸検知に加え、ターゲット追跡機能も有し店頭マーケティングなど様々なシーンでの活用が見込めます。5Gに移行することで、得られるデータが膨大に増幅するため、より精度が高まり新しいことへの応用が期待されます。

「株式会社ワコム」クリエイティブ事業部 プロダクト戦略担当 シニアバイスプレジデント
玉野浩氏

クリエイター向けのペンタブレットやペンディスプレーの技術開発や製造販売を行っている企業。映画業界・アニメーション業界を中心に、現在9割近い市場シェアを保有。クリエイティブの効率化という命題に対して、VR/MR用ゴーグルを装着し、描画機能を搭載したコントローラを操り、空中で3D描画を製作できるツールを開発中。5Gを活用し、多視点でのデザインレビュー技術の開発を目指します。

■ディスカッション:5Gで世の中はどう変わるのか?

後半は、オープンイノベーション事業創発室の残間光太朗をファシリテーターに、登壇者によるオープンディスカッションが行われました。ディスカッションでは、5Gの出現は単なるインフラの高速化ではなく、これまでのビジネスの主体であったセンサー機器をディスラプトる可能性や、パラレルワールドによるもうひとつの世界の出現、さらにはVRによるクリエイターの働き方改革や新たなクリエイティブの出現など、これまでのビジネスを一変させる可能性があるということで登壇者の見解が一致しました。これを受けNTTドコモの三ケ尻氏からは、5Gの商用化により「デジタルトランスフォーメーションをますます進展させられるよう、オープンイノベーションの思想で共創していきましょう」との呼びかけがありました。第2回定例会もほぼ満席で、新たな技術への関心や期待感の高さを示した会となりました。

登壇者

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